レマン湖一周ドライブ
7月6日水曜日。今日から、ジュネーブを発つ3日後までレンタカーを借りている。朝食はホテルで軽くパンをかじっただけで、すぐに出発。歩いて5分程のところにあるレンタカー「ハーツ」のオフィスに向かう。
途中、ホテルノボテルに立ち寄る。24時間の有料パーキングがこのホテルの地下にあるということだったので、その下見なのだ。狭い敷地の地下2階から地下5階のまでグルグルと傾斜のきついパーキングになっている。
仮に満車でも駅前の地下にもあるそうだし、地上にもパーキングメーターが結構ある。しかも、パーキングメーターなら夜10時以降は朝8時までは無料。但し、それはみなさん心得ているらしく、昨夜はどこも一杯だった。さらに、朝8時過ぎを狙いすまして駐禁取締りが始まるので注意・・・と言うのがフジモリ氏の忠告だった。
ハーツのオフィスでのたどたどしいやり取りのあと、窓口の女性に車庫の中へ連れて行かれる。
「アナタ達の車はこっちよ」
どんな車かな~?やっぱプジョー?それともオペル、アウディ?シトロエンもいいね。まさかベンツはないよね。
こっ・・・この見慣れたエンブレムは!
世界のトヨタのそれだった。4日間を共にする相棒は、日本名「カローラフィールダー」。コンパクトなステーションワゴンだ。年式こそだいぶ違うが、自家用車のカリブとは従兄弟みたいなもんだから、インテリアや操作機器類もよく似ている。左ハンドル&マニュアル車というハンデも、このカローラという車種が少しは埋めてくれるに違いない。でも、欧州車運転してみたかったなぁ。
天気はくもり。モンブラン橋を越えてレマン湖を左に見ながら反時計周りのコースをとる。
すぐに国道を離れ、湖畔に近い細い道に入る。別荘のような建物が見え隠れする湖畔の細い道をゆっくりと行く。もう午前9時をまわっているのに朝もやが残って、道沿いの樹々が湿ってみえる。
BGMは「ジェイク島袋」。透き通ったウクレレの音は、朝の湖畔ドライブには意外にマッチしている。車を停めて、湖畔の公園を散歩してみる。誰もいない。たまにカサカサと草を踏む音がするが、どれも陸で休むカモが我々を警戒して歩き出した音だった。湖面は鏡のように穏やかで、波打ち際も小さな波がチャパチャパといった程度。昨晩、ローヌ川の境目でみたレマン湖とは随分違った印象。厚い雲に覆われて、対岸の山は見えない。裾野から湖畔にかけての集落が見えている。
イヴォワールの街
再び走りだすと、すぐに旧街道の雰囲気漂う道に合流し、小さな集落の中を進む。いい雰囲気・・・などと油断したスキに、なんの予告もなく現れた国境線。
あッ!と気が付いたときには、係員はおろか何の施設も緊迫感もない国境線はバックミラーの先に見えなくなってしまった。悔しい!生涯初の陸地の国境越えだったのに。
でも、わざわざ戻ることもないだろう・・・とそのまま前進。
少し高台になった街道沿いの小さな村につく。小さな教会とホテルと郵便局と集会所があって、10数軒の民家があるだけ。その村の小さなパン屋で炭酸水とパンを買うことにするが、財布の中はゴチャゴチャで手間取る。ただでも他国の硬貨は見分けにくいのに、今日はユーロとスイスフランの両方が入っているのだ。
フランス国内に入ってしばらくすると、どこかの分岐点で間違ったらしく目標物のない田舎道を進むこととなる。畑や牧草地があって、たまに住居が現れる。交差点の多くは小さいながらもロータリーになっていて、スピード超過と、出会い頭の事故を防いでいるらしい。
頼りのミシュラン社製地図も、あくまで地名と道路を正確に示すものであって観光マップではない。だから、周辺の見所を表すマークなぞ付いていない。唯一、ビューポイントにだけ扇子を広げたような形のマークが付けられている。今いる辺りから一番近いビューポイントは、レマン湖に突き出たイヴォワールという街。道路脇の小さな標識を頼りにそこを目指す。
予想外に有名な観光地らしく、小さな田舎町に不釣り合いな大きな駐車場がある。その駐車場の向こうから街が始まっている。車を停め、2~3分歩くと中世の城郭村の外側に辿りつく。
アーチ門をくぐって、中世の城壁に囲まれた集落のなかへ足を踏み入れる。
イヴォワールは坂と花の村だ。全体の地形としては、レマン湖に突きでた半島の尖端に向かう緩やかなに傾斜地に集落ができている。突端に近い湖畔には、中世の古城が建っている。水際でせりあがる石垣とその四角く尖った天守閣(?)は、さながら片足をレマン湖に突っ込む騎士のよう。その下に桟橋があって、ヨットやボートが休んでいる。
車が行き来するような道路はない。そもそも指定車両以外は入れないのだろう。路地は入り組んでいて、緩急の坂や、ところどころに階段もあるのは、やはり城の防衛機能のひとつなのかもしれない。
家々の窓という窓はもちろん、壁まで花が飾られている。道端や広場にもたくさんのプランターや花壇がある。花の種類に詳しくなくても、これほどまでに綺麗な草花で彩られている街は、それだけで目を楽しませてくれる。
メインストリートと思しき大きな通り・・・といっても幅5mそこそこだが、そこには小洒落たカフェやレストラン、雑貨屋やみやげ物やなどが並ぶ商店街になっている。時刻は午前11時になったところ。ようやく店が開いて人々が活動を開始したような雰囲気。さらに少し進むと途端に静かになって、カフェと一緒になったミニホテルらしき建物が増え、教会があって、誰もいない広場がある。
何軒かのみやげ物店を冷やかしながら、一巡りして城壁の外へでる。
行きあたりばったりで辿りついたイヴォワール。小さく可愛い村だった。一晩泊まってみるのも、きっと楽しいに違いない。
ポツポツと雨粒が落ちてきた。それを機に駐車場へと足早に向かう。車に逃げ込むと同時に、雨はザァザァ降りになった。
雨中のエヴィアン
レマン湖から少し離れた幹線道路を東に向かって走っている。車窓には比較的新しい時代の家並みが続いている。
地図によると、トノンという街らしい。ジュネーブを出てから一番大きい街。相変わらず雨が激しく降っている。この雨のせいで、道は40km前後でゆっくりと流れている。
渋滞とまでいかないのは、交差する横道とはどこも信号のない小さなロータリーで結ばれているからだろう。それは、1kmの間に3~4つもといった感じに頻繁に設けられている。空いているときも、自然とスピード超過をしずらくなるし、感応式信号なんかよりもコストを含めてよほど効果的かも知れない。
道が湖畔に近くなってくると、そこはエビアン。あのミネラル水で有名な街。雨は相変わらず強く、空は暗い。左手に見えるレマン湖も白く煙ってしまっている。晴れていればエビアンの源泉にでも行ってみたいと思ったが、雨に濡れながら水を見るなんて、切ないだけだろうと思われるので無理しない。
それよりも昼飯にしよう。ちょうど、湖と道路を挟んだ平らに開けたところに複合モールが造られている。ホテルやショップやカジノもあるから、きっと食べ物もあるだろう。雨のせいで人影はないが、どうゆうわけか駐車場は満杯で、止める場所を見つけのに苦労する。
ようやくスペースを確保したはいいが・・・これはイカン。傘がないので車から出られん。雨が小降りになるのを待ちつつ、地図でこれからの行き先を考える。
少し雨が弱まったのを見計らって、傘はないくせになぜか持ってるウィンドブレーカーを頭からかぶって、カフェに転がり込む。他に客の姿はない。こんなに車がいるってのになぜなんだ?
コーヒーとサンドイッチとピザをオーダー。
そう言えば、今日は朝からパンばかり食っているな。店員はやる気なし。とはいっても、客が我々二人しかいないのではハリキリ様もなかろうが。そのうちに、ちょっと挙動不審なおっさんが入って席に着いた。どうやら馴染み客らしく、出てきたコーヒーを舐めながら、なにやら店員に話しかけている。店員の親父も気のない相づちを打ちながらテキトーに受け流している。
雨が小降りになってきた。窓から見えるレマン湖の対岸も、少し明るくなってきた気がする。よって、この行きあたりばったりドライブは、このままレマン湖畔を反時計わまりに移動しつつ北岸にでて、天候を見ながら北西方向を目指すことにした。
北側の方が天気が良さそうだし、天気は西から変わってくるものだ・・・という2点が根拠になっている。実に安易だが。
エヴィアンから15kmほど東へ進んだジンゴルプの街で、再び国境を超えてスイスに入る。路肩が広くなっていて、国旗があり、大きな電話ボックスのようなブースがある。その中に人がいるが、パスポートチェックはなく、減速して通り抜けるだけ。あっけない。ハンコ捺して欲しいなあ。
EU統合後はどこもこんな感じなのだろう。もっとも、スイスはEU加盟国ではないのだが。
レマン湖がローヌ川になるところがジュネーブなら、湖の東端に近い、ここジンゴルプの街の先にローヌ川がレマン湖になる地点がある。何が面白いものはないか?とワザとチョコチョコと脇道にそれながら行くうちに、自車の位置を見失い、ぐるぐる回った挙げ句に遊園地みたいなところに迷い込んだあと、ようやくローヌ川を渡る。
湖と山に挟まれた牧草地や畑が続く田舎道を進む。この辺はローヌ川によって出来たデルタ地帯だが、何となく羊蹄山のふもとの具知安町や真狩村あたりの雰囲気に似ているな・・・などと思いながらハンドルを握る。あがるかと期待していたは雨は相変わらずで、むしろ強まりつつある。
イヴェルドンの街
道が再び湖畔にでると、じきに尖った屋根のシヨン城が見えてくる。湖に突き出た岩場の上に建てられた城は三方を水に囲まれ、湖に浮かんでいるようにも見える。
観光バスが数台停まっているが、あまりに雨が激しいので我々はスルー。ジュネーブ滞在中に、また立ち寄るチャンスも訪れるであろう。
湖畔の単調な道をしばらく走り、トロリーバスと併走するようになるとモントルーのまち。やがて、高級リゾート風情の街並みが続く市街地へと入る。結構雨が降っているにも関わらず、人出が多い。
この雨では寄り道もままならないので、次の町ヴヴェイから高速道路に入ることにする。スイスの高速道路は無料。正確には、事前に一律額を払うとステッカーが支給されて、そのステッカーを車の見える所に貼っておけば良いらしい。レンタカーのコイツにもちゃんと付いている。
スイスの高速道路は走りやすい。スピードや距離が日本と同じで「km」表示だし、車線区分のラインや合流や分岐まわり、路肩の造りもなんとなく似ている。これがアメリカだとマイル表示だし、センターラインも、ボツボツしたピンが埋められていて、なんだか勝手が違うのだが。
高速道路に限らず、スイスの道は走りやすい。マナーがとても善いのだ。街中などでは、逆にこちらが戸惑うくらい対向車や歩行者に道を譲ってくれる。
時刻はまだ午後3時。このままジュネーブに戻るには早すぎるので、針路を北にとってイヴェルドンを目指す。「北西に向かう」というエビアンでの基本方針なぜか守っている我々。この事に特に意味はない。次の何かを思いつくまでは、とりあえずこのまま行こう。
道はだんだん高いところへと登っていく。雨は止んできたが、リアウインドが曇って、外の温度が下がっていくのがわかる。雨も困るが寒いのも嫌だ。灼熱のローマが恋しい。
山頂のパーキングで一休み。エビアンをでてからここまでノンストップだった。外に出て体を伸ばして深呼吸しよう。うわ~寒い。風が強い。
麓の畑のなかに数十軒程の小さな集落が見える。単線の線路が真っ直ぐに延びて、その小さな集落に細い筋をひいている。ジュネーブ方面からトコトコと来た三両編成の列車が集落の中で暫く停車し、やがてまた走り出した。そのレールの先には湖がひろがっている。上空の雲の切れ間からは、光が幾筋か伸びている。
ヌーシャテル湖はスイスで一番水が綺麗な湖として有名らしいが、ここからは遠くて暗い水色にしか見えない。大きな温泉リゾートがあるという湖畔のイヴェルドンの街も、霞んでよく判らない。
人はいないのに、妙に広々としたイヴェルドン駅前のコインパーキングに車を止める。まるっきり田舎街の駅前の風景。旧市街地は公園のようにだだっ広い駅前広場を横切った向こう。赤レンガの家々が壁のように見えている。
暗く狭い通路を抜けて旧市街へ。トンネルを抜けると、そこは街中の広場だった。とんがり屋根の城のような建物や、時計の付いた教会。このふたつの特徴的な建物と、その他いくつかの店が広場に面していて、縦横に通りが走っている。
雨上がりの広場に人影はまばらだが、横に延びた目抜き通りの先には人々が行き来しているのが見える。そちらへと向かう。小さな街のわりには人出が多くて驚かされる。
道沿いは商店街になっていて、中心の比較的大きな交差点に「COOP」と書かれたスーパーがある。交差点を挟んだ斜め向かいにももう一棟「COOP」があり、どちらも4フロアほどの店舗になっている。
そのうちの一つに入る。店内は低い天井と狭い通路そこに雑貨から家電寝具まで扱っている。このなんだか昔懐かしい雰囲気は…。
「主婦の店ダイエー」って感じ。
店内をぐるぐるとしたあと、スポーツ用品コーナーでコンパス(方位磁針)を買う。明日か明後日か判らないが、トレッキングのときに出番があるに違いない。これがおみやげナンバー10。
続いて地下の食料品売場へ。ワインの特売コーナーがあり、推販のおばちゃんがいて試飲などさしている。おばちゃん曰く、
「ここにあるのは、全部スイスワインだ」
とのこと。日本ではあまり馴染みがないが、スイスはワインの名産地らしい。ところがほとんどスイス国内で消費され、国外にはでないのだそうだ。この部分は、おばちゃんの説明をヒヤリングしたのではなくて、ガイドブックから得た知識。
おばちゃんは、ワインのテイストや産地などを、こちらの理解力を確かめる様に顔を覗き込みながら、ゆっくりと説明してくれる。味は試飲すればわかるかも知れないが、地名は言われてもピンと来ない。で、ガイドブックの地図を開いて見せる。これはこの辺、これはこの辺・・・と指差してくれる。多くはレマン湖の北側と、東に伸びるローヌ谷周辺だった。そこへ、少し離れた売場の若い女性店員が寄ってきた。
「May I help you?」
などと言っているが、店内に客の姿は少なくて暇しているところに、面白い奴らが来たと思ったのだろう。みんな、人懐こくて親切な人達。旅先で受ける親切は嬉しいものだ。
3種類の白ワインを各1本ずつ買って店を出る。初めておみやげらしいおみやげを買った。これが11個目のおみやげ。3kg近い重量が指に食い込んで痛い。そして、これらを日本に持ち帰るには、もはや、もうひとつカバンを買うしか方法はない・・・と腹をくくる。
車に戻る前に、広場にある靴下屋に立ち寄る。ここでは12個目のおみやげになるトレッキング用のソックスを買う。もうひとつ鞄を買うと決めた以上、買い物に躊躇する必要はないわけで・・・。
こんな田舎街で靴下専門店が成り立つものか?と心配になるが、普通の紳士用・婦人用・子供用、それにトレッキング用だけでなく、スポーツ用、ジョギング用などが棚1本づつ綺麗に陳列されている。きっと、日本と西洋では靴の歴史が違うから、靴下に対する意識も違うのかも知れない。
車で湖畔に移動する。ようやく太陽が顔を出してくれて、ヌーシャテル湖も岸辺の濡れた草木も、光を受けて輝いて見える。左手には、イヴェルドンの街が湖に沿って延びている。その背後には丘が高くまで続いており、ところどころに集落がある。なぜか、双眼鏡が備え付けられていてそちらの方向を見れるのだが、数倍に拡大された位では家々が多少大きく見えるだけで、格別に新しい発見があるわけではない。
丘を越えて
見えていた丘のどこかにあるサントクロアを次の目的地にする。地図をみると、ここから直線距離で10kmほど。オルゴールで有名な街らしい。
湖畔に近い裏通りを進んで行く。どこかでもう少し陸側を走る表通りにでないとサントクロアへの交差点に行けないのだが、表通りとの間には住宅地と水路があるようで、行きたくても道がない。
随分と通り過ぎた辺りで、表通りの方がこちらに近づいてきて合流した。戻るのもなんだし、少し遠回りで道も若干曲がりくねっているようだが、隣町のグランソンを経由でサントクロアを目指すことにする。
少しの間建物が切れて、湖を見ながら走る。線路が並走している。グランソンのまちに入ると道は狭くなって、目指す交差点は、地図を見誤ってないとしたら、地図からは想像出来ないほど小さなものだった。すれ違うのがやっとの細く曲がりくねった道。家々のあいだを縫うようにしながら、坂を上っていく。
グランソンの集落を抜けると周囲の景色は牧草地に変わる。道は丘と丘の低いところを緩やかにカーブしながら、だんだんと高度を増していく。時々、牛やヤギの姿が見える。坂が急になって道が細くなると、斜面に寄り掛かるようにして建つ数軒の村にでる。花咲く庭に人影はないが、農機具が転がっていて、犬がいて…山奥の隠れ里のような雰囲気。
ここからは、どれが目指す道かが分からなくなってしまった。集落から伸びる数本の道はどれも同じようで、小さな標識に書かれた地名は地図を探しても見当たらない。
とりあえず「これぞ」と思う方へ進むと、しばらく田舎道を走り、丘を回り込み、またさっきと似たような村に出る。役に立たない標識を頼りに、斜面に気まぐれな線を引いたようなつづら折りを行く。村を抜けると牧場。牧場をしばらく行くと、またまた同じような村。
太陽の位置と、時々ヌーシャテル湖が見えることで方向感覚こそ失わずにいるが、行きたい方向に進んでいる訳ではない。
とは言え、別に何としてもサントクロアに行かねばならない訳でもない。ただ、斜面に点在する昔ながらのスイスの山村を味わいつつ、気がつくと高いところへ向かっているに過ぎない。
やっと太い道に出たが、行き交う車はない。大きくカーブしながら上り下りを繰り返すの尾根の周辺を走っているせいに思えるが、あたりに牧草地は減って森がち。周囲の様子はよく見えない。やがてガスが出てきて、ライトを点けながら走らなければならなくなった。かと思えば、急に晴れて虹が見えたりする。
ニヨン城
斜面にひろあるサントクロアの町は大雨だった。スイスの丘を嫌というほど堪能したので、サントクロアはスルーして、再びイヴェルドン方面に向かう。ヘアピンカーブの続く急斜面をくだり終えると、道はなだらかな傾斜の牧草地のなかを緩やかなカーブを描いて延びている。
やがて高速道路へ入る。来たときに寄ったパーキングで一休み。山を越えればレマン湖だ。
ローザンヌとジュネーブの中間地点にある街ニヨンに寄り道する。高速を降りて湖畔への坂道を下っていくと市街地に至る。線路をくぐってさらに坂を下っていくと湖畔にでた。
気がつけば時刻は午後9時。薄曇りの空はいまだ明るいが、人影は少なくひっそりとしている。湖畔に近いところにはカフェやレストランなどが並んでいるが、ほとんどは閉まっている。
田舎街のニヨンは、夜が早いらしい。
フェリー乗り場があって周辺は遊歩道になっている。対岸は午前中に寄ったイボワールあたりだが、目を凝らしてもよく分からない。
小綺麗で小さなメインストリートを歩いて行くと、ニヨン城の下にでる。ぐるりと取り巻く城壁。湖畔から一段高いところから町と湖を見下ろしている。
城の周りもほとんど人影はなく、自分の歩く靴音ばかりが狭い道に響いている気がする。
城壁に沿って坂を上って行くと、城のすぐそばまで行ける。ニヨンの街と一緒で、小さくかわいいお城。
すっかり暗くなったジュネーブに帰ってきたのは午後11時に近かった。噴水がライトアップされて、暗いレマン湖浮き上がって見える。
路上のコインパーキングを探すして街中をしばらく走るが、どこも一杯なので、やはりノボテルホテルの地下駐車場に車を入れる。さて、一晩で幾らかかるのかな?
夕食は、ベルン通りで見つけた小さなカフェ・レストラン「プチ・シャレー」。
でっぷりした元気なおばちゃんが、息子らしい若く陽気なウェイター達を仕切って、店を切り盛りしている。カウンター内の白ヒゲを蓄えたおじさんが旦那だろう。店内には大きな窯があり、赤々と揺れる炎がいい雰囲気。
今夜のメインディッシュはラクレットにする。
ラクレットは、切った丸チーズの切り口を温めて、溶け出したチーズを茹でたジャガイモなどにつけて食べるスイス料理。これを1人前オーダーし、2人でシェアすることにする。
最初にウェイターが色々と説明してくれる。イタリア語まじり(訛り?)のフランス語らしく、まったく理解不能。でも、分かったふりをしてうなずく我々。
やがて、ナイフ・フォークと小さな取り皿だけが運ばれてきた。チーズは?ジャガイモは?
やがて、「お待たせ」って感じでウェイターが、とろとろチーズとほくほくジャガイモを、2~3口分ほど運んできた。え?たったコレっぽっちなの?
そうではなくて、我々のチーズは店内の窯の前に切り口を炎のほうへ向けてデンと置かれていた。
出来たてのアツアツを、アツアツのうちに食べられる様にしてくれている訳だ。感激!ワインにも合う。
皿が空になる頃を見計らっては、ウェイターが次の2~3口を運んできてくれる。ラクレットの「わんこそば」状態。6~7皿ほど食べてすっかり満腹。