快晴のレマン湖畔で
今日はようやく良い天気。あと2日・・・せめて、あと1日早くこの天気だったらよかったのに。モーニングを食べたら、簡単に荷物を整理する。
このあとピックアップの車がくる午後1時まではあと4時間ほど。それまではその辺を散歩しよう。いや、待てよ。
・・・ってことは、モンブランの往復が出来るんじゃないか?シャモニまでが1時間、山の上まで行って帰って1時間、そしてジュネーブまで1時間の合計3時間。計算上はいける。
7月9日土曜日、行程10日目。
でも、止めとこう。モンブランのある南の空は雲が多い。晴れているか晴れていないか分からないとこに向かうより、確実に晴れているここに居よう。
とはいえ、チョットだけ足を伸ばして、レマン湖を見下ろす高台がないかと地図を開く。ジュネーブの北15kmほどのフランスのまちジェクスにロープウェイがあって、山頂に視界360度を示すみかんの断面みたいなマークが書かれている。そこへ行こう。
ジュネーブ市街を抜け、国境、畑の続く平坦な道、山ふところの村、カーブの続く道を経て到着したロープウェイ乗り場。なんということか!どうやらスキー場のゴンドラだったらしく、動いていなかった。
なんだよこの地図ゥ~。まぎらわしい表記するなよ~。
で、ゴンドラ乗り場からの眺望はというと、広々として気持ち良いが、霞んでレマン湖すら良く見えず、その向こうにあるはずのモンブランは当然見えずはずもない。
ジュネーブに戻り、レンタカーを返却。4日間お疲れさま。こんどは欧州車がイイな。ホテルに戻って荷物を片付けよう。だが、その前に・・・無い!カメラが無い!
どうやら車に置き忘れてしまったらしい。ハーツのオフィスに戻ると、カウンターの上に置かれていた。
いや~、めるしぃめるしぃ。
レマン湖に向かって開けたジュネーヴの新市街は、上から照りつける日光と湖面からの反射で、街の隅々まで夏の太陽が行き渡っている様に明るい。そして暑い。
この「暑い」って言う感覚はローマで感じて以来、スイスに来てからは4日目にして初めてのもの。ずっと、天気が悪かったからね。
湖畔はどこまでも公園になっている。そこを歩く。爽快でとても気持ちいい。ジョギングする人、ベンチで本を読む人、芝生に寝転がる人。みんな思い思いに数日振りの太陽を楽しんでいるようだ。水鳥たちも気持ちよさそうに泳いでいる。
モンブラン橋の近くまで来たところであまりの暑さに耐え切れず、屋台でアイスクリームを買い、それを舐めつつ歩く。そこへ中東系の青年が現れて、噴水をバックに写真を撮ってくれ・・・とカメラ付き携帯をあこに差し出す。いまや写メは世界標準なのね。(※この当時、日本でカメラ付き携帯が急速に普及していった)
はい、パシャ。
「ありがとう!君達はチャイニーズかい?Oh!ジャパニーズか。僕はクウェートだ。クウェート知ってる?そうか良かった。ジャパニーズのフットボールチームはGreatだ。ワールドカップはナイスゲームだったよ」
ほぼ一方的にまくし立てられ、彼は意気揚々と去って行った。誉められたのは「トルシエJAPAN」だが、まるで自分が誉められたみたいにいい気分。こいつはイイぞ。いつか逆の立場で使ってみよう。
「携帯のボタンがみんなアラビア文字でなんでビビった」
とは、あこ談。
モンブラン橋はたくさんの赤い大きなバルーンで飾られていた。どうやらこのあとパレードがあるらしい。でも、それが始まる前にここを発つことになりそうだ。
橋を渡って南岸のイギリス公園へ。夕暮れだった4日前はしっとりとした雰囲気だったが、今日は華やかさが漂っている。知らず知らずに足どりも軽くなる湖畔の散歩。ベンチに腰掛けてみる。花壇や鉢の花々が、久しぶりの青空に向かい競うように咲いている。
そういえば、ジュネーブ滞在4日目なのにいまだ旧市街に足を踏み入れてない。でも、いまからだとちょっと駆け足になるので、残念だがパスする。
フジモリ氏がピックアップに来るまであと30分ほど。ホテルに戻って荷物をまとめることにしよう。
集合時間の5分前、荷物を持ってロビーに降りるとすでにフジモリ氏が待ち構えていた。4日前と同じくベンツに乗って空港へ。
帰りは直行便ではないので、乗り継ぎの際の注意を受ける。フランクフルトまでルフトハンザ・ドイツ航空で移動し、そこからJALに乗り継ぐのだ。フランクフルトでの乗り継ぎの待ち時間は約5時間もある。
「この時期に、こんなに天気の悪い日が続くのは珍しい」とフジモリ氏。やっぱり、ツイてなかったってことか・・・。
「ぜひ、天気の良いときにまたいらして下さい」
そりゃ~そうしたいのは山々だけど、一介のサラリーマンにとってそれは簡単なことじゃないのよ、フジモリさん。
アウトバーン
ルフトハンザ・ドイツ航空3667便は午後2時50分発。荷物を預け、チェックインを終え、スイスはEU加盟国でないので出国審査を受け、それでもまだ1時間半もあるので昼食にする。
レストランもあるが、昼からあまり重い食事はしたくないので、バイキング形式というか「アレとソレと」指を差してよそってもらうスタイルのフードコートがあったので、そこにする。
ポテトにチキンにサラダ、もちろんビールは欠かせない。長かった旅もそろそろ終わりだな。お疲れさん、乾杯。
まだ時間があるので、ここに至ってようやく職場や友人に配るおみやげを探す。初日の機内で貰った「航路の地図」に始まり、昨日のツェルマットで買ったマヨネーズまで、基本的にすべて自分達へのおみやげだったりする。まあ、そのうちイヴェルドンで買ったワインの一部は、親へのみやげに回す予定ではあるが。
とは言え、スイスみやげは実に難しい。腕時計やハト時計、ナイフにジッポ、キーホルダー、絵はがきetc...どれも微妙。結局、無難にチョコレートってことになる。最後に、自分へのみやげとしてステンレスの水筒を購入。トレッキングの際の強い味方となってくれるであろう。
ジュネーブからフランク・フルトまでの飛行時間は1時間20分ほど。その短い時間を惜しんで眠る・・・ではなく、ガイドブックでフランク・フルト空港の構造、空港から街までのアクセス等を予習をする。
旅はまだ終わっちゃいない。
せっかく乗り継ぎに5時間もあるんだから、その間にフランク・フルトの街へ出てみよう。そして有名なレーマー広場に行って、本場のフランクフルトをつまみにドイツビールを呑む。これが我々の旅における最後の目論みだ。
フランクフルト空港に到着。タラップを通って到着ロビーへ。周囲の皆が通り過ぎて行くなか立ち止まって、再度、ガイドブックでターミナルの造りを確かめる・・・とその時、名前を呼ばれた。びっくりして振り返ると、JALの地上係員の女性だった。
「乗り継ぎの待ち時間をさくらラウンジでどうぞ」とのこと。
スゲー!迎えに来てくれるんだ。それとも、これって「JALパック」だからだろうか?ラウンジに向かう道中、付き添ってくれる地上係員の彼女に、レーマー広場に行きたい旨を告げ、空港の構造や街までのアクセス等の情報を収集する。
彼女からは「EU内での移動とそれ以外とでは出入国から搭乗までのターミナル内の移動経路が違う。Sバーン(都市近郊鉄道)の空港駅は始発駅でないので逆方向に行かない様に注意する。レーマー広場へは、最寄りではあるが乗り換えが必要なレーマー駅よりも、乗り換え無しで行けるハウプトヴァッヘ駅から歩いた方が良い」等の貴重な情報を得た。
ラウンジに到着。本来は、ラウンジでのサービスの説明など受けるのだろうが、逆に我々が空港を離れることを説明し、もしも空港への戻り時間がギリギリになった場合の担保にする。
Sバーンの空港駅までは遠かったがスムーズに到着。しかし・・・キップの買い方が判らん。正確には、いくら探しても「Hauptwacheハウプトヴァッヘ」のボタンが見つからない。
Sバーンは改札口がないので、キップを買わないでも乗ることが出来ない訳ではない(つまりキセル)。そのせいか、空港ターミナルからすぐのこの券売機でキップを買う人はなかなかいない。みんな定期券を持ってるとはとても思えないがなぁ・・・。
しかし、もし抜き打ち検札員に捕まったら眼の飛び出るような罰金をとられてしまう。
こんなことで悩んでいる「この時間」がもったいない。よしッ、タクシーだタクシー!地上に出てタクシー乗り場へ。さすがはドイツ。タクシーもベンツ。しかも、装備も豪華。シートは革張り。料金はバックミラーに組み込まれたパネルに映し出されている。
「レーマー広場へ」
ドライバーは無線機ではなく、タッチパネルで行き先を入力している。タッチパネルからはデジタル音声が何やら返事をしている。タクシーはターミナル前からぐるぐるとランプウェイのスロープを経て、すぐに片側4車線の高速道路「アウトバーン」に入る。タクシーはロケットのような加速で、あっという間に160㎞/hに到達。
は、速い・・・。
でもまったく怖さはない。さすがはベンツ、さすがはアウトバーン。5分ほど走ってアウトバーンを降りる。とはいえ、巡航速度160km/hだから15kmくらいは進んだ訳で、フランクフルトの街まではもうすぐだろう。近代的なビルの立ち並ぶフランクフルト市街地を抜け、とある交差点でタクシーは停まった。ここから先は車が入れないので歩いていくらしい。
レーマー広場
運転手が指差していた方向に従い、アスファルトの街角から石だたみの道へと入る。石だたみが燦々と照りつける夏の陽射しを反射してまぶしい。賑やかな方へ賑やかな方へと歩いていく。
人々の行き来がいっそう激しい路地をヒョイと曲がると、レーマー広場のシンボル「切妻屋根」の建物たちが見えてくる。空港を出てからまだ30分ほど。ドキドキのフランクフルト途中下車。ここまでは順調順調♪
しかし、この人の多さはなんだろう?
西側から広場に入ろうするものの、前に進むのが困難なくらいの混みよう。が、その訳はすぐ判明。レーマー広場はトライアスロンのゴール地点になっているらしい。コースが広場の真ん中を横切っていて、そこにスタンドまで造られている。これらの設備のせいで広場がかなり窮屈な感じ。
でも、いざ広場の中に進んで見るとさほど狭いわけではなかった。どうやら、我々が通ってきた西側の入口付近が一番狭くなっていたようだ。
広場には可愛らしい切妻屋根の建物が並んでいる。南側にある階段状の屋根を持つのが「レーマー」と呼ばれる旧市庁舎。レンガとしっくいで装飾されている。このシンプルな感じはいかにもドイツっぽい。
トライアスロンのコースに押しのけられて、ところ狭しとオープンカフェのパラソルが並んでいるので通り抜けるのが大変。コースはまだセッティング中で、多くのスタッフ達が機材を運び込んだりしている。
コースを横断して広場の反対側に渡る。こちらにも大小の切妻屋根の建物が並んでいるが、南側と違ってシルエットは直線的なスッとしたもの。柱と文違は木で、それが外壁にきれいな格子模様を描いている。こちら側のほうがスペースは大分ゆったりしている。しかし、暑い陽射しを避けているのか、あまり人はいない。
しかし、この素敵な広場と建物を写真に収めるのは大変。画のなかにトライアスロンコースの柵やゴールスタンドが入るのはイマイチ美しくない。カメラを縦にしたり斜めにしたり、しゃがんだり背伸びしたり・・・。
カフェやショーウィンドーを眺めながら、ゆっくりと広場を一周したら・・・よっしゃ!ビールだ、ビール!
南側の一角に立ち飲みの店を発見。5~6個並んだ大きなビア樽がテーブル代わりになっている。いいね~、イメージ通り。ちょうど、樽のひとつが空いたところ。しかも、広場の中心に近い特等席。ここに決定!
カウンターの向こう側にはチョイ強面の中年女性。これも安酒場っぽくて良し。だが困ったことに、壁に貼られたメニューの字を見ても、どれがビールでどれがフランクフルトかすら判らない。
そういえば、この旅でガチンコのドイツ語圏は初めてなのだ。「ビール」や「フランクフルト」そのものズバリを指す単語すら見当たらない。いずれもブランド名やサイズだと思われるのだが・・・。
それでもどうにかこうにか大ジョッキ2つと、紙皿にマスタードがたっぷり盛られたフランクフルト一皿をゲット。さきほどの特等席に移動する。
移動したは良いが・・・この樽と来たら我々の身長にはだいぶ高い。そのままだと胸の高さくらいまである。止まり木のような椅子に座ればそれなりに格好がつきそうだが、あたり前だがこれまた背が高い。
どうやって座るんだ?椅子が倒れないようにバランスをとりながらよじ登るようにして何とか腰掛ける。
しまった! 座ったのは良いが、樽との距離が遠すぎたぞ。
一旦、椅子を降りて位置を調整し、再度よじ登る。それでもイマイチ遠い。仕方なく、腰掛けたまま椅子もろともジャンプしながら小刻みに前進。ビールを飲むのも一苦労だ。
これらの動きは、周囲からは相当滑稽な東洋人に見えているに違いない。しょうがないじゃん、背が小さいんだから。照れ隠しに、椅子の上から周囲に愛想を振りまいてみたりする我々。
「カンパ~イ!」
いやぁ、イイじゃないの~。天気は良いし、レーマー広場は素敵で賑やか。ドイツビールも旨い。麦芽100%のしっかりとした味。旨いといえばフランクフルトもそう。皮はしっかりしていて、なかはジューシー。
よし、写真撮ろう。まずは、ビールとフランクフルトから。そんなところへ、我々の後ろで談笑していた若い男性2人組みのうちのひとりが「写真を撮ってあげるよ」と話しかけてきた。
おお、サンキュー!ダンケシェーン!
あこのカメラを渡す。しかし、ファインダーを覗かずに両手を伸ばして、背面のモニターを見ている彼。ダメダメ違うよ、一眼なんだから。目を近づける!そうそう、それが正解。(※当時は、まだ一眼デジカメではモニター付きで無いものが多かった)。
なに?乾杯のポーズしろ?はいはい、これでいい?え?もう一枚?
・・・などとジェスチャー交じりで。カメラを構える彼の連れも後ろからなにやら茶々を入れ、ワイワイとやっている我々。こういう触れ合いがとっても楽しい。
さて、ビールも飲んだし、その辺を散歩しながら空港へ戻るとしよう。じゃあまず・・・マイン川でも見に行こう。川は確か南の方向だったと思うが、念のため例の引きちぎったガイドブックを開いて位置関係を確認する。
「May I help you?」
まるで教科書のような英文で話しかけてきたのは、我々の隣の樽にいた男性。
ガイドブックを開いて3秒も経っていない。どうやら、この周囲に居るのは滑稽な東洋人観光客を放っておけない優しくてモノ好きな人達ばかりらしい。
すぐにマイン川の方角は判明。話しかけてくれた彼と、彼の奥さんと、乳母車の赤ちゃんにお礼を言い、写真を撮ってくれた彼らにも手を振ってレーマー広場をあとにする。
ハウフトヴァッヘ
彼らは我々に英語で話しかけてきたが、どこの国の人だったのだろう。我々同様に旅行者なのか、それとも地元のドイツ人なのだろうか?トライアスロンの関係者やファンかも知れない。そんなことを話しながら歩く。
マイン川の岸にでた。夏の陽射しが川面に反射してまぶしいが、風は涼しい。
茶色い水がゆったりと流れている。カモの群れが川を横切っていく。
レンガ造りの土台に鉄のアーチ橋があって、高い塔を持つ聖堂が見える。高い建物は他になく、のどかな風景が広がっている。見えていた「アイゼルナー橋」を往復したあと、マイン川を離れて、再び旧市街へ。
ハウプトヴァッヘ駅を目指して旧市街を歩く。ひとつ裏通りに入っただけで、あんなに混んでいたレーマー広場とはうって変わり人通りは少ない。
トラムに沿って歩いていくと、表の大通りにでる。
そこは近代的な建物が立ち並ぶ新市街だが、よく見ればところどころに古い建築物も残っている。そのなかのひとつが「ハウフトヴァッヘ」と呼ばれる18世紀のバロック調の建物。現在はカフェになっている。
空港まではハウプトヴァッヘ駅からSバーンを利用する。来るときは切符の買い方が判らずに断念したが、2度目の失敗は許されない。しかし、今回の目的地は空港。イラストもあるだろうし、それくらいは誰かに聞けばよい。
エスカレーターを下ってハウプトヴァッヘ駅の構内へ。フライトは午後9時05分。現在の時刻は午後7時ちょっと前だから、ほぼ予定通り。
エスカレーターを降りたところで、念のために再び引きちぎれたガイドブックを開く・・・と、その瞬間だった。ドイツ人のばあさんが我々の方へ突進してきた。
困っている外国人観光客を見つけた喜びで、眼がらんらんと輝いている。ドイツには親切な人が多いらしい。わずかな時間にこれで3人目だもの。
しかし、このばあさんはレーマー広場の彼らと違い、口角泡を飛ばすようなバリバリのドイツ語使い。う~ん、何を言っているのかさっぱり判らん。
もっとも、窮地に陥った(?)日本人を救うべく現れ、しかもここは駅。まさか「私が子供の頃、あなたの国とは同盟国だった」などど言っているはずもない。
「エアポート、エアポート」
果たしてこれは通じるか?でないと、かえって厄介なことになってしまう。
どうやら通じたらしい。ばあさんはドイツ語でなにやらしゃべりながら、手を引っ張らんばかりの勢いで我々を導いていく。
50mほど行ったところに、さらに下へと降りる階段があり、ホームはこの下らしい。ばあさんはジェスチュアを交えて「ここを下りるとホームだ」と言う。
ばあさん、ダンケシェーン!まあ、教えてもらうまでもなかったけどね。
Sバーン
今度はすぐにキップを買えた。空港のマークがついていて一目瞭然。やがて、電車がやってきた。結構混雑している。でも、2つ目の「フランクフルト中央駅」でほとんどの客が降りてしまうと、車内は空席が目立つようになった。
空港まではあと3駅。電車が地上にでた。着陸体制に入る飛行機が見え、線路脇にはトラックのターミナル様なものも見えている。
あれ?おかしいぞ。
どんどん田舎に向かっている感じがする。空港周辺の施設は遠ざかってしまった。そして「3つ目の駅」は空港ではなかった。駅前は閑静な郊外の住宅地の雰囲気。そもそも、往路で乗ろうとしたSバーンの空港駅は地下だった。地上にいること自体がおかしい。
これはイカン。どこで間違ったんだろう?扉の上の路線図と「3つ目の駅」の駅名を見比べつつ、現在地を確認する。
なるほど・・・ハウプトヴァッヘで乗って中央駅を経由する電車のすべてが空港へ行くわけではないらしい。空港へ行くには、【S8】か【S9】に乗らなければならないのだが、我々がハウプトヴァッヘで乗ってしまったのは【S7】。空港の南側を通って郊外へと向かう路線だった。中央駅で乗り換えなければいけなかった訳だ。だから、みんな中央駅でみんな降りてしまったのか。
とりあえず次の駅で降りる。タクシーが客待ちしているような駅ではない。タクシーを呼ぶよりは、反対側からくる電車を待ったほうが早いだろう。フライトまであと2時間を切っている。国際線に乗るには若干不安な残り時間。ドキドキ・・・。
戻りの列車は5分ほどでやってきた。夏の夕暮れの日差しを浴びながらフランクフルトへと向かって走る列車。ずいぶん遠くまで来てしまった気がする。車両の端のボックス席には若い男女4人組。なんと、ワインをラッパ飲みしている彼ら。とても楽しそうにしている。「世界の車窓から」のワンシーンのようだ。
帰国
フランクフルト中央駅に到着。階段を渡って隣の【S8】【S9】のホームへ移る。すぐにやってきた電車に乗って、無事にフランクフルト空港に着く。
いや~良かった良かった・・・などと安心してはいけない。
フランクフルト空港は広い。しかも、手荷物検査や出国審査なども残っている。空港ロビーはすごい混雑で、長い列が出来ていた。週末だからだろうか?これはいけない・・・と思ったら、混雑しているのはEU圏内への出国窓口だけで、EU圏外への出国窓口はガラガラだった。
結局、電車を降りてから搭乗ゲート前まで20分足らずで移動完了。まだ、フライトまでは1時間を残していた。みやげ物屋を覗くには十分過ぎる時間がある。
日本航空408便は定刻どおりの午後7時05分、夕暮れのフランクフルト空港を飛び立った。
初めてのヨーロッパは感動と驚きの連続だった。やっぱりヨーロッパは凄い。そして人々も親切で温かな人達だった。前半で一緒だったツアーのメンバーも楽しくて優しい人達に恵まれた。後半は天気がイマイチだったが、スイスを全力で駆け巡り、悔いなし。そんなことを考えながら目をつぶる・・・という間もなく眠りに落ちた。
再び目を覚ましたのは、約7時間後の朝食時間。食べたらまた寝る。それから3時間後、昼食。また寝る。往路はあれほど苦痛だった機内での時間も、復路はひたすら寝て過ごしあっという間に過ぎていく。
離陸から約11時間後、日付が替わった7月10日(土)の午後3時20分に成田着。お疲れ様。
あれ、どうした?じんましん?
あこのタンクトップで剥き出しになった両腕にはたくさんの赤いブツブツが出来ている。ありゃ~これはダニじゃないか?機内で配られた毛布のせいかも知れない。最後の最後でツイてないね~。「ツイてない」と言えば、ここ何日間か忘れていたが、そういえば、今日の六曜はなにかな?
「仏滅」
仏滅に始まり仏滅に終わった新婚旅行であった・・・が、こんな微妙なオチでは、楽しい思い出をたくさん作ってくれたヨーロッパにあまりにも申し訳ない。そこで、前半のツアーで一緒だったU夫妻から頂いたメールで締めることにする。
--- Uさんからのメール ---
パリ、ローマでご一緒させていただいたUです。その節はお世話になり、また、貴重な写真を送っていただき、ありがとうございました。
カンツォーネナイトの楽しいひと時がよみがえりました。
今回は新婚カップルが多く、保護者のような私たちですが、私達も四半世紀前のハネムーンのことを思い出していました。本当に楽しい時間を過させていただきました。
私達は帰国後、翌日から仕事で、時差ぼけと戦いました。その頃、お二人はスイスで雄大な景色を楽しんでいらしたようですね。あいにくの天候のようでしたが、お二人でのレマン湖ドライブは楽しかったことと存じます。お二人の末永い幸福をお祈り申し上げます。
私達にとっては登山は無理ですが、トレッキングくらいはしたいと、スイスは次期旅行の候補地のひとつです。ドイツのビールも捨てがたいものがあるが。。。
人生は仕事ばかりではないので、しばらく働いて、次の楽しい計画を立てましょう。また、私のほうも使い捨てカメラで撮影した写真があると思うのですが、まだ現像・焼付けしていません。焼付け後、JPEGに変換して送りつもりです。申し訳ありませんが、今しばらくお待ちください。
また、異国のどこかでお会いできると良いですね!!
取り急ぎ、お礼かたがた、報告まで
(ヨーロッパの旅 完)