榕樹灣
9月30日(月)天気は今日もうす曇。さて朝食は何にしようか?昨日は麺だったから・・・そうだ!
今日はペニンシュラでアッパークラスのモーニングはどうだろう?高いんじゃないか?いや、高いと言ってもトーストとかなら知れているだろう?
そんなやり取りの後、私の提案が受け入れられ2日連続で半島酒店(ペニンシュラホテル)に行くことになった。
ホテルを出て彌敦道(ネイザンロード)を南へ。
「ニセモノ、ニセモノ~、とけい~」
アンタら昨日もいたね。
今日もまた和泉元彌似のボーイに案内されテーブルにつく。メニューは170HKドル(約2700円!)と200HKドル(約3200円!!)の2種類のモーニングセットのみ。恐るべしペニンシュラ。
迷わず(?)オーダーした170HKドルのセットは、トースト&クロワッサンに、フルーツ又はジュースと、コーヒー又は紅茶がつく。結局、チップ込みで372HKドル。1人あたり3000円近い朝食になってしまったが、まあ、何事も経験だろう。
朝食を摂りながらT朗は「地球の歩きかた」を見て今日の予定をリサーチ中。
「島でハイキング&海鮮料理を食べるってので、どうだ?」
朝イチの提案に「やってもーた」感を自覚している私は、このT朗からの提案に対しふたつ返事で承諾。出発前に、今日も2階にあるトイレへ向かう。今日はボーイはいない。
その後、ホテルの地下にあるブランドショップ街へ。
しかし、目的はブランドではなく「ペニンシュラグッズ」のショップ。ラウンジで使われている銀食器や、部屋用のスリッパ、ロゴ入りのチョコレートなどが売っているが、いずれもペニンシュラ価格で手が出ない。一番安価なペニンシュラのロゴ入りタバスコを購入。
スターフェリーで中環(ヅォンワン/セントラル)へ。そこから少し歩いて快速船に乗り換える。双胴の快速船で我々が目指すのは南Y島(ラムア島)。香港島の南西にあり、中環からだと香港島の裏側に位置する島だ。
この埠頭からは、南Y島の榕樹灣(ヨンシーワン)と索罟灣(ソッグワン)にフェリーが出ている。しかし、スターフェリーと違いひっきりなしに行き来している訳ではなく、1時間に1便にも満たない。
40分ほど待合室で過ごし、先に出航となった索罟灣行きの船に乗る。
寒い・・・。
船内はエアコンがキンキンに効いている。これが話しに聞く香港の空調か。壁のパネルの設定温度を見ると7℃しかない。寒いはずだ。そもそも最低設定温度に7℃があるのが信じがたい。
ビクトリア湾が背後に遠ざかって行くと船はスピードを上げ、快速船の本領発揮。沖に停泊するコンテナ船を横目に20分程度で南Y島に着く。
ここから索罟灣まで1時間半程のハイキング。
埠頭から数100m続く狭い道の両側には小さなレストランや店が数多く並ぶが、騒がしさはない。いかにも小島といった、のんびりした雰囲気。
自動車は1台も見あたらない。移動には自転車を、荷物の運搬には四輪バギーが使用されている。
商店街は次第に住宅地に変化し、木々囲まれた庭付きの小さな家やアパートが増えてくる。住人は西洋人も多いようだ。漁村とリゾートとの雰囲気を併せ持つこの村は、きっと昔の香港の元風景を残しているのだろう。
索罟灣
森を抜けると突然現れる海水浴場「洪聖爺海灘(ホンシンイエビーチ)」。
小さな売店と綺麗なトイレと更衣室。どこから来たのか、多くの子供達の姿が見える。ライフガードの姿も見えるが、実際に海の中に入っている人はいない。背後に見えるのは、のどかなこの島には不釣合いな発電所。
ここを過ぎると歩く人はますます少なくなる。私は写真を撮ったりしながら、ゆっくり歩く。T朗は私の数10m前方をズンズンと進み、時々立ち止まる。
「唔該(ンコイ)!」
私の少し後ろを歩く男性が大きな声を出した。
確か「唔該」は「ありがとう」のはず・・・。なので構わずに歩き続ける。ところが、後ろから再び「唔該!唔該!」の声。どうやら私に呼びかけている様だ。振り返ると、中年の夫婦とその母親らしい3人。彼は広東語で話し掛けてくる。
「索罟灣は、こっちで良いのか?」
と聞いてきている様に思えるのだか、よく解からない。身振り手振りで「解からない」を表現しながら、図らずもここで再び広東語を試すことになる。
「我係、日本人(ンゴハイ、ヤップンヤン)」
通じた様だ。これは嬉しい。彼は進行方向を指差しながらブロークンな英語を返してくる。
「オー、ジャパニーズ。索罟灣、OK?」
「OK.OK.」
ここまでは一本道。間違うはずもないが、3人は私に丁寧に礼を言い、年老いた母親のペースに合わせて、再び私の後ろをゆっくりと歩き始めた。私は、歩きながら「地球の歩き方」の後ろの方のページを開く。確か「唔該」はありがとうの意味だったはずだが?
「唔該」には、「ありがとう」以外に「おたずねします」と言う意味もあるとの記載があった。広東語は難しい。
長く続く上り坂。汗が噴出す。T朗はいつの間にか上着を脱いで歩いている。アブや蚊などの姿は見えないので刺される心配はない。でも、亜熱帯のこの地で、黒のTシャツに黒のタイトジーンズという選択が問題では?
私は相変わらずショートパンツ、手にはタオルで万全である。
道が下りにさしかかると、眼下に索罟灣が見えてくる。対岸の山裾に集落があり、1番左の方にフェリー埠頭が小さく見える。湾内には、小さな船と、何かを養殖しているイカダが多数浮かんでいる。集落は近くに見えるが、湾を大きく迂回して行かなければならず、道のりはまだ長い。
索罟灣の村は、海岸に面した小さく細長い集落。メインストリートの右側に海産物や海鮮料理の店が並び、左側は海の上に張り出した料理店のテラスになっている。
それらの中で1番大きな店「天虹海鮮酒家」に入る。
時刻は午後2時を回り、店内に客はほとんどいない。海の上に位置するテラスからは、湾内に浮かぶ小さな船やイカダ、時々水面に浮かび上がって来る魚が作る波紋が見える。
我々の接客をしてくれた店員は、中年の人の良さそうな男性。
店が暇な事もあるのだろうが、ブロークンな英語とカタコトの日本語、身振り手振りでメニューの内容や食べ方を教えてくれ、写真を撮ったり、ビールを注いだり、スープをよそってくれたりと、何かと面倒を見てくれる。
食事のお伴は「Sun Miguel」と言う名のビール。日本のに比べると炭酸が薄くてスカッと感不足だが、香りとあっさりした味わいで濃い味付けの料理との相性は悪くない。
美味しい海鮮料理をたらふく食べ、昼間から飲んだビールで、すっかり酔っ払う。先にカードで支払を済ませ、何かと世話を焼いてくれた店員サンにチップを払おうと財布の中を探ると、100HKドル札と50HKドル札と僅かな小銭しかない。
どうしようかな・・・。
料理も旨かったし、サービスも良かった。50HKドルは日本円で・・・と一瞬考えたものの、酔って気が大きくなった勢いで50HKドル札を差し出してしまった。彼は、大喜びで何度も礼を言い、店の奥に去って行った。
「50HKドルは多すぎるんじゃね~の?800円位だろ?」
「しょーがねーじゃん!細かいのがなくてさ」
「でも、日本人はチップの払い方を知らんって馬鹿にされないか?」
しばらくすると、さっきの彼が大皿に盛られたスイカとメロンを持ってやってきて、我々のテーブルに置いた。
「ワタシカラ、サービス!」
彼はニコニコ。さすがに50HKドルのチップは効果絶大。こちらもニコニコである。
「チップが、メロンとお互いのハッピーな気分に化けたってコトか・・・」
チップ文化は奥深い。その後、快速船に乗り再び中環へ。足の疲れが極限に達していたので、とりあえず宿に戻って休憩することにした。
廟街
しばし休憩の後、ホテルを出て暗くなった街へ出る。尖沙咀(チムシャツォイ)から地下鉄に乗り、北へ2つ目の駅、油麻地(ヤウマテイ)で降りる。
彌敦道(ネイザンロード)西側に南北に細長く伸びる廟街(ミウガイ)のナイトマーケット。これを北の端から南へ向かって歩く。
道の両側の建物もいろいろな商店となっているが、やはり廟街の名物は路上にひしめき合うように軒を連ねている露店街。
売られているのは、生活用品や衣料品などが中心。他には、何だか分からない食べ物、乾電池や延長コード・タップや携帯ラジオなど電気製品、アダルトVCDなどの店が多い。なんとなく怪しげな雰囲気だが、地元の買い物客や観光客と思われる西洋人などで賑わっている。
進んでいくにつれ道は右へ左へと曲がり、骨董品っぽい焼き物や古銭、中国民芸品、香港の景色を描いた油絵などの店が並ぶ。露店は歩道上の狭いスペースに移り、すれ違うのがやっとの幅である。アクセサリーや小物、子供のおもちゃや大人のおもちゃの店が多い。
再び露店は道一杯に拡がる。衣料品店が多くなり、他にはCDショップ、時計やアクセサリー、家電、コピーのブランド品などの店が並ぶ。西洋人にとってはどうなのか判らないが、同じアジア人観光客である我々が買いたくなるものは少ない。でも、いかにもアジアの露店街と言った雰囲気は歩いていて楽しいものだ。
いったい、どのあたりまで来たのだろうか?
はじめは南に向かって歩いたはずであるが、何度か左右に曲がる露店街を歩いてきたので距離感も方向感覚も狂い気味。こんな時にのために、と持ってきたキーホルダー状になっている直径1cm位のコンパスを取り出す。
こんな小さいヤツでもなかなか役に立つ。彌敦道があると思われる東方向に歩き出す。周囲は派手な看板が多くなり、どうやらキャバレー街(死語?)の様だ。
やがて、明るいネオンの大きな通り、彌敦道に復帰。地下鉄の駅のマークが見え、油麻地駅のひとつ手前の佐敦(ジョートン)駅のそばである。ホテルから1km位の地点まで戻ってきていた。
平日の午後9時を回っているが、活気はむしろ昼間以上のようだ。次々と到着する2階建てバスからは続々と人が降りて来て、繁華街へと消えていく。もちろん、外出先からこの周辺に帰って来る人もいるだろう。しかし、多くは郊外から出てきているはず。彼らはどこから来て、何時頃帰るのか?そして、バスの運行時間は何時までなのだろう?
南Y島で遅い昼食を腹一杯食べてしまったので、それほど腹は減っていない。ホテルに戻っ寝るには早いが、昨日も今日も1日歩きまわり、疲れきっていた。
そこで、昨晩と同じ様に諾士佛臺(ナッツフォードテラス)へ向かう。ここはホテルからも近く、並んだ店の雰囲気も悪くない。
今日は、地中海風のバーに入る。やはり、香港人の若者と西洋人が多い。店内にはレゲエが流れ、天井に近い高い位置にテレビがいくつか設置されている。テレビからは、店内の雰囲気や音楽と関係ないマイケルジャクソンの「スリラー」であったり、何の映像か不明だが、冬山の映像が流れたりしている。きっと、街で売っている安いVCDなのだろう。それらは時々バグって映像が乱れたり、何分間もポーズのままだったりしている。
ピザをオーダーし、ビールを軽く2杯ほど飲む。ビールの爽快感と、ピザのスパイスで少し食欲が出てきたが、香港に来てから間違いなく食い過ぎ。これくらいで止めて、ホテルに戻ることにした。